麻生専門学校グループ

■開講式[前編]

2017.10.16

  

9カ月間の特別プログラムがスタート

 2017年9月30日(土)、福岡市の百道浜にある麻生グループ社屋にて、GCBⅢ(第5期)の開講式が開催されました。これから9カ月間にわたる特別プログラムがいよいよ始まります。学生にとっての正装であるスーツに身を包んだ43名は、そろって緊張の面持ち。けれども、彼らの目は期待と希望に輝いていました。

 開講式の主なプログラムは、

1.麻生泰塾長による講話「リーダーを目指す麻生塾生に期待すること」

2.麻生泰塾長との対話

3.GCBⅢ担当教職員紹介

4.GCBⅢプログラムの目的説明(林宏治先生)

5.第4期生によるメッセージ

6.第5期生自己紹介スピーチ

7.記念撮影・昼食および情報交換

 となっています。また、午後からはオリエンテーションとして「仲間意識の醸成」を目的とした演習(チームビルディング)を行いました。

 当サイトではこの日の模様を3回に分け、今回は麻生塾長の講話を、2回目は第4期生のメッセージとGCBⅢの目的と特徴を、3回目はチームビルディングの内容を、それぞれご紹介したいと思います。

 麻生塾長は、株式会社麻生の代表取締役会長であり、麻生セメント株式会社の代表取締役会長を務めています。2013年には九州経済連合会(九経連)の会長に就任、また2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会理事でもあります。この国の将来を担う若者たちに、塾長はどのようなメッセージを送ったのでしょうか。

   

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麻生泰塾長講話

「自分が社会にどう役立つか」の発想を

    

  

 たった一度の人生なんですね。それぞれがどのような外見、境遇であっても、人生は一度きりです。人間、これほどフェアなものはありません。しかも、その人生は自分が勝ち取ったものではなく、神様や両親から与えられたものです。ということは、与えてもらった人生をいかに有効に、そして感謝心を持って生きるかが大切だということです。

 

 みなさんにはまず、2017年の日本に“自分がいる”ということがどういうことかを考えていただきたい。現在、世界には72億人の人間がいます。飢餓や戦争、病気や貧困で苦しんでいる人たちが、日本の人口に比べて圧倒的に多いということです。これほど平和で豊かな国に生まれ、健康な体を持ち、おしゃれな服装をして、おいしいものを食べていられる自分たちが、いかに幸運かに気付いてほしい。

 

 同じ日本人でも、1940年に20歳だった人は戦争に行きました。対して2040年に20歳になる人がどういう環境にいるのか、それは誰にもわかりません。一つだけ明確なのは、2017年に20歳前後の時期を過ごしているみなさんが、今までで一番平和で恵まれた時期に生きているということです。それを忘れないでほしい。

 

 その上で、自分がこれから何のために生きていくのか、社会にどういう役立ち方をしていくのか、自分の未来の姿を真剣に考えてみてください。特に大切なのは、国家や地域など“公的に役立つ”ということ。自分が楽しむことも家族に感謝することも大切だけど、これだけ恵まれているのに、「それだけでいいのか?」と、私は思います。どのように社会に役立って、それをどう次世代につなげていくか、という発想を、GCBⅢというリーダー育成プログラムを受講するみなさんには常に持っていてほしいと思います。

   

  

カメがウサギに勝つ

 例えば、私の目標は何かと聞かれたら、まずは麻生家という140年続いた家を守り、麻生塾、飯塚病院、麻生セメントといった家業を守りたい。もう一つは地域に役立つことです。地域といってもいろいろあって、筑豊という地元もそうだし、福岡という地域、九州という地域、世界から見れば日本という地域、宇宙から見れば地球という地域――そういうものにいかに役立っていくかを日々考えています。
 日々考えるというのは、いろいろな方法がありますが、私は大学ノートにその日のことを毎日書き留めています。これは30年以上続けていて、今のノートが134冊目です。朝はその日のスケジュールに添って予習をし、夜はその日にあったことを踏まえて一日を整理し、復習をする。

 私は学生時代の学業成績はそれほど誇れるものではなかったけれども、日々こういうことを積み重ねる人間が最終的に勝つということを知っています。カメがウサギに勝つのです。野球選手の松井秀喜さんやイチローさんも、毎日地道な素振りを決めた回数行うといった習慣が天性に勝つと言っています。私も同感です。毎日コツコツ続ける粘り強さが何より大切なのです。

 目標を立てるときは、必ずその目標をいつまでに達成するのか、期限を設定しましょう。ビジネスマンが目標を設定するときに重要な要素を「SMART」と呼んでいます。

S……Specific(具体的な)
M……Measurable(測定可能な)
A……Achievable(達成可能な)
R……Realistic(現実的な)
T……Time-bound(時間制約がある)

「今年は英語を頑張る」という目標の立て方ではなく、「いつまでにこの英語の資格を取る」「何月までにTOEICで何点取る」というように、具体的で期限つきの目標を設定してください。

      

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「N・A・T・O」が日本を停滞させている

 次に日本の現状を見ていきましょう。日本のGDPは1995年からずっと約500兆円。なんと21年間も横ばいのままです。むしろドル換算では90%にダウンしています。その間に、中国はGDPを15倍に伸ばし、インドネシア、マレーシア、韓国なども3倍に伸ばしています。

 また、1990年に日本は世界のGDPの13.4%を占めていましたが、2016年は6.6%にまでシェアを落としています。世界経済が3.2倍に拡大しているのに、日本は横ばいですから、こうなるのも当然です。世界経済の中で日本はジリ貧になっている。しかし、その危機感が果たして今の日本人にどれだけあるでしょうか。

 今の日本人の問題点を示した言葉が「N・A・T・O」です。北大西洋条約機構ではなく、「No Action Talk Only」、つまり日本人は言うだけで動かない、決められないじゃないか、と海外の人は見ているわけです。

 今の多くの日本人の反省すべきところは、「できない理由を賢そうに言う」ところです。不平、批判、分析ばかりで、「一億総評論家」になってしまっている。できない理由を考える暇があったら、どうすればできるかを考えましょう。批判ばかりせず、具体的に行動しましょう。もちろん、行動するだけではなく、しっかり結果を出すことも社会人には求められます。

 神様というのは、みんなに運をくれます。しかし、「求めよ、さらば与えられん」というように、求めた人にはより多くの運が降ってきます。仕事も同じで、意欲のある人ほど難しい仕事、大切な仕事が与えられます。それを幸せだと感じ、前向きに取り組める人が伸びる人材だと考えてください。

 

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「英語プラス1」を習得しよう

 先ほど日本が停滞していると言いましたが、もちろん希望はあります。日本のアドバンテージは、伸びゆくアジアに近いことです、イギリス人やフランス人と話すと、自分たちの国は周りをPIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)などの経済成長が期待できない国に囲まれていて、アジアに近い日本がうらやましいとよく言われます。

 欧米諸国の間では、成長しているアジア諸国は魅力的だけど、いきなり現地に拠点を置くのはリスクがあるから、まず日本に足場を置いてからアジアへ進出しようという動きがあります。したがって、日本の中でもアジアに近い九州、福岡にとっては大きな強みです。

 私がみなさんに期待しているのは、「体力・語学力・魅力」という3つの力をつけることです。私は70代ですが、まだまだ元気。学生時代にスポーツで体力をつけたおかげだと思います。私が好きな福沢諭吉も、まず体力だと言っています。「まず獣身を成して後、人心を養え」、先に獣のような強い体を作って、それから人の心を養えというのですね。

 次に語学力。これからの時代、語学力とITは社会人に不可欠な道具です。日本の人口1億2500万人に対し、世界の人口は72億人で、日本語が分かる人は地球上の2%以下です。日本語しかできない人は、2%の人としかコミュニケーションができない。そんな人がこれからの企業で求められるわけがありません。

 できれば「英語プラス1」の2か国語を習得できるといいですね。英語を話す人は現在20億人ですが、将来は40億人くらいまで増えるでしょうから、英語は得です。インド人もフィリピン人もマレーシア人も英語を話しますから、英語は武器になります。中国語やスペイン語もこれから需要が確実に高まるでしょう。外国語を習得するためにも、外国人の友達をたくさん作るといいと思います。

 魅力というのは難しい要素ですが、外見は変えられなくても、思いやりや優しさ、相手を大切にする気持ちが身についている人はやはり魅力があります。また、「あいつはこれに詳しい」「このことで困ったらあいつに聞こう」と思われるような得意分野を持っていることも大きな魅力になります。この3つの力を身につけて、みなさんが社会に役立つ人材に育っていくことを期待しています。

  

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講話を終えて

 講話の後は、学生から塾長への質疑応答の時間を設けました。質問を受け付けると、参加している学生のほとんどが元気よく挙手。「日本のGDPが横ばいの中、私たちが学生のうちにすべきことは何でしょうか」「私が志望している航空業界は、今後どういう形で日本の成長に貢献できるでしょうか」「オリンピックがある2020年に向けて、私たちが取り組むべきことは」など、さまざまな質問が寄せられ、塾長がその一つ一つに丁寧に答えていました。
 九経連の会長に直接話を聞くなど、社会でもめったにない機会であることを知っているのか、休憩時間に入っても学生たちは麻生塾長の席の前に行列を作り、個々の質問に対する答えをもらっていました。チャンスを生かそうとするこの積極性を大切にして、行動力を高めていってほしいと思います。彼らの成長を楽しみにしています。

  

麻生専門学校グループ 教育支援本部 部長 キャリア教育担当 徳久晶子